『聖書教育』2023年4月号 総主題:今、共にキリストを証しするために ー新たな『自立と協力』ー 2023年度テーマ:「今」 聖書:ルカによる福音書、ローマの信徒への手紙 巻頭言:イースターメッセージ 受難週 4 月2日 聖書の学び 1課 今日わたしと一緒に楽園に ルカによる福音書23章26~43節 1.女たちの涙  残酷な道のりを行列が進んで行きます。嘆き悲しみ、泣いているのは社会的弱者の女性たちです。今までにイエスと恵みの関わりを持った女性たちは少なからずいたでありましょう。「エルサレムの娘たち、わたしのために泣くな」と振り向いて31節までの言葉をもって呼びかけるイエスの言葉は、エルサレムの将来に関してイエスが述べられた預言の言葉(13章34節以下、19章41節以下等)と関わっています。もっと悲しむ時が来るのだからその時に備えよ、しっかりせよ、という励ましの言葉であると共に、神の前に悔い改めよという響きが汲み取れます。『生の木』は義人であるイエスを表し、『枯れた木』はイエスを断罪する人々を指すのでしょう。ご自分の苦境の中で、弱い者たちを励ましつつ人々の将来を案じるイエスの姿です。 2.とりなしの祈り  34節の「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです」は、他の福音書にはないルカ福音書のみの祈りです。亀甲カッコでくくられていますが信憑性の高い言葉といえるでしょう。この祈りの言葉によって、神から見捨てられた罪人として死ななければならない人としての苦悩よりも、苦しみの中でも敵対する人々のためにとりなす神の子としての姿が強調されます。イエスは人々の侮辱やあざけりの挑発に乗らず、このとりなしの祈りをしました。この祈りは議員たち、兵士たち、十字架につけられた犯罪人をはじめ、すべての人々が発したイエスを貶める言葉や態度を包み込んでしまうような愛の祈りの言葉です。 3.今日わたしと一緒に  「犯罪人も、一人は右に一人は左に、十字架につけた」(23章33節)では、マタイ福音書25章にある終末時にすべての民族が、羊と山羊を分けるように右と左により分けられる話を思い出します。けれどもイエスを信じる人と信じない人に分かれた、という見方ではなく、この両方の姿に自分が重なります。イエスを知る前は、あるいはイエスを知った後も苦しさのあまり、片方の犯罪人と同じような不遜な言葉や思いを持ったかもしれません。しかしイエスを知り、恵みをいただいてからはもう一方の犯罪人のように、主イエスへの悔い改めと共に主と対話する者へと変えられました。イエスに対して、彼なりの悔い改めと信仰告白をしたその人に対してイエスは言われます。「はっきり言っておくが、あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる」。遠い先のことではなく、イエスは「今日」と言われました。イエスと共にいる約束をこの人は受けたのでした。現在のコロナ感染危機やミャンマー軍による自国民迫害、ロシアによるウクライナ侵略戦争で死を考えることが多い私たちです。最後の時も、その先も伴ってくださる主の姿に力づけられます。死で終わらない命を表している希望の言葉です。 共同学習 おとなクラス 聖書に出て来る人の中で最も幸いな人は、イエスから「あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる」と言われた犯罪人だと思う、という意見を聞きました。この世でイエスと会って対話をして直接あなたと共にいる、と言葉をいただいたのですからそうかもしれません。あなたはどう思いますか? この人は死ぬ寸前まで神を知らない生き方をしていたとすれば、この世に生きている間にイエス・キリストを知り罪赦されたことを信じた人は、もっと幸いだと言えるのではないでしょうか。イエスのお名前で苦しむ他者を覚えて祈る恵みを与えられるのですから。 共同学習 こどもクラス 頭ごなしにきびしく注意されたり、誤解なのにきつく叱られたという経験はありませんか?悔しくて、「ちがうよ!」と大声で言いたくなりますね。イエスさまは罪が無いのに有罪になって十字架につけられました。ひと言も恨み言を言わないで、ご自分を犯罪人だとする人々のことを父なる神さまに「彼らをおゆるしください」と祈られました。どうしてそうなさったと思いますか?そんなイエスさまを信じて対話した人がいました。この人はイエスさまから共にいると、約束されました。今の私たちも同じ約束をいただいていることを知っていますか? 毎日のみことば 4月3日 月曜日 ルカ22章31~34、39~45節 イエスはペトロが過ちを犯さないようには祈らず、ペトロがイエスを否定しても、信仰を失ったとしても、イエスはペトロを決して見放さないゆえ、ペトロが「新たに生きるための祈り」。もうひとつの祈りは「み心を受け入れる」格闘の祈り。み心と現実のはざまを歩む者が未来を神に委ねる祈りでした。 4月4日 火曜日 使徒7章51節~8章3節 ステファノは生きて主を証しする歩みをして欲しかった。ステファノの死を主イエスは喜ばれたのでしょうか。イエスの死は地上最後の犠牲、赦しに生きる世界の到来の告知でした。主のみ心は思想信教を理由とする「差別」や「殉教」者を生まない世界を創出することであり、我らはその世界を願うのです。 4月5日 水曜日 使徒8章26~40節 宦官であったエチオピア人。信仰者としてエルサレム巡礼をした帰り道。馬車の中でイザヤ 53 ~ 57 章を読みつつ、「苦難の僕」は誰なのかとの疑問が生まれます。主がフィリポを遣わされ、宦官に聖書から福音を語り、宦官は主を信じ受浸しました。フィリポがいなくなっても宦官は喜びの道を進みます。 4月6日 木曜日 ヨハネ20章24~29節 主の復活の現場に居合わせず、頑に「見ないと信じない」と語るトマスに対し、仲間の弟子はトマスのために祈り、主の言葉を共に想起し、語り合うのはまさに「教会」。閉じた部屋はトマスの心の姿。その部屋に、傷跡が残る主が入られ、トマスに語ります。トマスの信仰告白は新しい道の始まりです。 4月7日 金曜日 詩編22章1~32節 十字架にかけられた神。地上に足を置く場所はなく、標本のように釘打たれた体。誰がこの無力な姿に神を見るのでしょう。見捨てられた神などに。しかし我らは知る。今日、罪の満ちる世界で苦しみへと追いやられ、死に向かう人々を。自らの無力の中で、苦しむ者と共におられる主を見上げ祈るのです。 4月8日 土曜日 ルカ23章50~56節 イエスに死刑を求めるユダヤ議員の中でイエスを深く信頼し、決議に反対した議員ヨセフ。ヨセフはイエスの遺体を受け取り、丁寧に自分の墓に安置します。この日、主イエスは墓の住民となり、「死」の世界にもその足跡を残されました。暗き墓を永遠の住まいとせず、新たな命が旅立つ場とするために。 執筆者紹介 ●聖書の学び 岡村直子 日本バプテスト東京第一教会 ●毎日のみことば 坂本 献 所沢キリスト教会 ●編集後記 森 淳一 『聖書教育』実務者会 聖書教育 2023年2月15日 発行・発売 発行人:中田義直 発行:日本バプテスト連盟 〒336-0017 さいたま市南区南浦和1-2-4 電話 048-883-1091 FAX 048-883-1092 日本バプテスト連盟HP:https://bapren.jp/ ご注文は連盟販売管理室まで hanbai-kanri@bapren.jp 郵便振込み口座:00150-9-192579 日本バプテスト連盟販売管理 レイアウト・印刷:ニューライフ・ミニストリーズ(新生宣教団) ワークシートイラスト:吉﨑 愛 定価:385円(本体350円+税10%) (C)2023日本バプテスト連盟